私とブン太と日常


†Case2:私とブン太と日常†




ブン太と放課後の薄暗い廊下を歩く。


いつもならそろそろぼんやりと曲がり角が見えてくるはずなのだが…。


「な、なあ名前。何か廊下がやけに長い気がするのは俺だけか?」


『…いや、私もよ。どうやら異空間に引きずり込まれたみたいね』


私とブン太がやけに廊下が長いという話しをすると、誰もいないはずの廊下にちりんという鈴の音がした。


隣で肩を揺らすブン太。


『…怖い?』


そう聞くと、ブン太は勢いよく首を横に振った。


「んなわけねぇじゃん!行くぞ、名前」


先を歩くブン太に着いて行きながら、辺りを見回す。


さっきから同じところをぐるぐると歩いているようで、景色が全く変わらない。


『この空間に引きずり込んだやつを引きずり出さなきゃダメだね。よし、まずはそこの壁に触ってみてよブン太』


ふむ、と顎に手をやりながらブン太に指示を出す。


「俺かよっ!」


ブン太は心底嫌そうな顔をしてジャッカル君みたいなことを言った。


††††††††††


『ほら、私じゃ幽霊おびき出すことは出来ないから』


祓うことは出来ても、おびき出したりは出来ない私。


それに比べ、ブン太は優しいからか幽霊に好かれるため囮には丁度いい。


「分かったよぃ…」


渋々というように頷いたブン太は恐る恐る壁に触れた。


ミシッ


「私の…………、獲物おおぉおっ!」


「う、うわあぁああ!?」


壁から出てきた女の子がブン太の腕をガシリと掴んで壁に引きずら込もうとする。


ブン太は驚きながらも必死に抵抗しているが、女の子の力が強いみたいで、片腕はもうすぐ壁の中だ。


『あーもう。また女。はあ…、とりあえずブン太を連れて行かないでね』


女の子に軽く触れると、甲高い悲鳴をあげて消えた。


女の子に触れる時に誤って指先を噛まれたから少し痛いけど、廊下も無事元通りになったからいいか。


「お、おい!大丈夫かよ!?」


ブン太が私の手を掴んで指先を見る。


『少し痛いけど平気だよ。ブン太、腕出して』


「俺は後でいいから、とりあえず手当するぞ!部室に救急箱がある。行くぞ!」


『え、ちょっとブン太…!』


ぐいっと引っ張られて男子テニス部の部室に強引に連れて行かれる。


††††††††††


男子テニス部の部室内でブン太に手当をしてもらう。


幸い、テニス部に人はいなかった。


「ったく、気をつけろよな。お前が怪我してどうすんだよ」


水道水で傷口を洗い、傷口は浅いものの一応絆創膏を貼られる。


じんわりと浮かんだ血が絆創膏に染み込んで少し赤くなったのが気になるが仕方ない。


『ごめんごめん。油断してた。ブン太、掴まれてた腕出して』


そう言えば今度は素直に腕を出してくる。


女の子に掴まれていた腕は軽くうっ血していて暗赤色になっている。


子供や動物霊は遠慮がないからこういうことになりやすいのだ。


うっ血を起こしている部分にキスをして、湿布を貼る。


部活でも体育の授業でもジャージを羽織れば目立たないけど、人の手形のついたうっ血痕なんてブン太自身見たくないでしょ?


「サンキュ、名前。にしても、さっきの女の子は何だったんだろ…」


『さあ…。寂しかったんじゃない?』


「あんなに小さいんだもんな」


ブン太はさっきの女の子のことを可哀相だと思ったのか、悲しげな顔をした。


確かにあの子はまだ5歳くらいで、自分が死んだことも分かってなかった。


『…大丈夫だよ。ここにいるより、ちゃんと転生したほうが幸せになれるはずだから』


「そっか…。そうだよな!名前、帰りに何か食いに行こうぜ!!」


落ち込むブン太を慰めるようにそう言うと、ブン太はふっ切れたような顔をして私の手を引いた。


『ちょっ、夜は太るから嫌だよ!?』


「そんなこと言うなって。俺が奢るんだからさ!」


ぐいぐいと引っ張って、ファミレスに近づく私達。


まあ、ブン太が嬉しそうだから今日くらい付き合ってあげてもいいかなって思う。




[ 2/25 ]

[*prev] [next#]
[back]
[しおりを挟む]



「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -